全員参加でナレッジ共有する会議改革:DXのための”場”の作り方

カテゴリ:ナレッジマネジメント

更新日:2026年3月2日

本稿では、会議において、付箋で全員の声を可視化し、生成AIを観点出しの補助として使いながら、60分で「振り返り→課題抽出→解決策→タスク化」まで進める定例会議の改革の例を紹介します。

合わせて、すぐに試せるように「付箋記入のための問いの例」と「60分アジェンダ例」も掲載します。

DX推進が進まない理由は「ツール」より「協力が得られるか?」にある

DXの推進者の悩みには「社内からどうやって協力を得るか」がありませんか?例えば、AIのツールを導入しても、メンバーがDXの目的を腹落ちして理解し、意識がアップデートされないと、仕事のやり方が変わりません。

やり方を変えるのは勇気が要ります。だからこそ、協力が得られにくいこともあります。社員の意識を変えるには、社員同士が自由に意見を交換でき、自分が得た知識をもとに上司と気兼ねなく話せる環境作りが欠かせません[1]。筆者は、その方法の一つとして、社内の「場」である会議のやり方を変えることが大きく効くと考えています。

この記事が役立つ方

次のようなお悩みを持つ経営者・管理職の方を対象者にしています。

  • 会議が「次のアクション」に落ちず、モヤモヤしている
  • 発言が少なく、特定の人に偏っていると感じる
  • 議論しているのに結論が出ず、決めきれない

本稿では、主に次の点を扱います。

  • 会議を「伝達の場」から「振り返りの場」へ変えるメリット
  • 参加者の本音の「発言」を引き出す、付箋と生成AIの使いどころ
  • 「発言すれば何かが変わる」という実感を作り、意識改革につなげる考え方

定例会議が「伝達の場」で終わると何が起きるか

発言者が偏る/結論が出ない/行動に落ちない

会議改革の目的は、社員が上司と気兼ねなく交流できる環境をつくることです。筆者は、そのために 1on1と定例会議の設計 を重視しています。ここでは、すぐに全社・全チームで取り入れやすい「定例会議のやり方」に絞って紹介します。

筆者が若い頃は、会議で言いたいことを言えなかったです。伝達が中心の会議が多かったです。

伝達中心の会議が続くと、発言は管理職や特定の人に偏りやすくなります。参加者から発言が出ない状態は、「伝達の場」の典型的な弊害です。

その結果、結論が出ないまま上席者が決め、参加者は従うだけになりがちです。次のアクションまで落とせずに会議が終わることも増えます。

「発言することに価値がある」と社員が実感し、「知識を共有したい」と思える会議にするには、会議そのものを “発言が生まれる場” に設計し直す必要があります。

この環境づくりは、経営者や管理職の仕事だと考えます。

会議改善の考え方:定例会議を「振り返りの場」にする

会議には定例会議と不定期会議がありますが、共通する基本は次の3つです。

  • 目的・ゴールを参加者に明示する
  • 時間内に必要な議論ができるよう、タイムマネジメントする
  • 参加者が「発言に価値がある」と感じられるよう設計する

本稿では、チームの定例会議を扱います。筆者は試行錯誤の結果、デジタル・ワークプレイスを使って、定例会議を 「振り返りの場」 として回す形に落ち着いています。

会議改革のポイントは“全員参加”の仕掛け

全員参加を実現するコツは、会議冒頭に 10分の「付箋に書く時間」 を確保することです。

「付箋に書く」=「発言」と捉えることで、口頭発言が得意でないメンバーの意見も同じ土俵に乗せられ、発言の偏りが減ります。

口頭共有は 1人3分 など短く区切り、残りは付箋を中心に進めます(連絡事項は最小限にし、必要なら別途フォローします)。

補足として、筆者は日報・週報の提出を必須にしていません。報告書は「良いこと」を強調しがちで、うまくいかなかったこと、悩み、心配事が出にくくなることがあります。だからこそ、会議を「率直に書ける/話せる場」として設計することを重視しています。

60分で回す「会議の進め方」:付箋で発言を可視化する手順

全体像:「表出化 → 原因分析 → 課題化 → 解決策 → タスク化」

ここで紹介する例では、定例会議は60分です。この時間の中で、次の流れを回します。

  1. 振り返り(表出化):前週の良かったこと/改善したいこと/うまくいかなかったこと/悩み・心配事などを付箋に書く
  2. ギャップ把握(問題の特定):口頭説明を聞きながら、目標と現実のギャップは何かを捉える
  3. 原因分析 → 課題化:「どこに取り組めば改善に近づくか」を言語化し、付箋に記入する
  4. 解決策の検討:課題ごとに、実行可能な打ち手を考え、付箋に記入する
  5. タスク化:期限・担当・実施内容を確認してタスクに落とし込む

以降で、それぞれのポイントを説明します。

1)問題を表出化(振り返り)

  • 各自が付箋に書き出すことが、表出化の第一歩です
  • 言語化しきれないことは口頭でも補います
  • 口頭共有は1人3分と決め、順番はルーレットで決めます

2)原因分析 → 課題化 → 解決策 → タスク化

  • 付箋に書かれた内容を、原因・課題・解決策へと「言い換え」ながら整理します
  • 「なぜ?」を繰り返して深掘りする力(言い換える力)をチームで育てます
  • 生成AIは、言い換えや問いの「叩き台」を作る用途で活用します

ここで注意したいのは、前提(現場の事情・制約・経験知)のインプットが少ないと、生成AIの答えは一般論になりやすい点です。

そのため筆者のチームでは、生成AIは  1“叩き台”や“抜け漏れの観点追加” に使い、最終判断はチームで行います。

このプロセスを毎週行い、メンバーが腹落ちしたタスクを積み上げていくことがポイントです。発言した内容が実際に改善につながると、メンバーはより率直に発言してくれるようになると期待しています。

会議の改善で生成AIはどこに効くか

会議で出てくる課題や解決策は、個人の「直感」に支えられている部分も多いものです。直感を研ぎ澄ますことは大切ですが、同時に 直感にはバイアス があることも意識する必要があります。

直感の罠から抜け出す

自分の考えが常に正しいとは限りません。選択肢が一つしかないとも限りません。

この「直感の罠」から抜け出す方法の一つとして、生成AIを “別視点の供給源” として活用することが有効です。チームでアイデアを出し合い、互いの直感を確かめ合いながら、より良い解決策に近づけます。
ただし、会議の時間とリソースには限りがあります。だからこそ、会議の場では必ず 優先順位づけ が必要になります。ここで「デジタル・ワークプレイス」の価値が出てきます。

デジタル・ワークプレイスは「AI × 場」

本稿では、「デジタル・ワークプレイス」を 「 デジタル=AI 」「 ワークプレイス=場 」と捉えています。

AIの活用と、効果的に振り返りを実施する「場」を設計することが、筆者の仕事です。

そのために、付箋はAIにもインプットできる形で残す必要があります。当社ではデジタルボードを利用しており、付箋に書いた内容をその場でAIに入力できます。テンプレート例を図1に示します。

デジタルボードを利用する「場」会議のスクリーンショット

定例会議のテンプレート(例)

テンプレートの構成は次の通りです。

  1. 最上段に、チームのKPIと前週までの実績値を置く
  2. 「先週の振り返り」は10分間。各自が付箋に書く(良かったこと/感謝したいこと/うまくいかなかったこと/悩み・心配事など、何を書いてもOK)(10分)
    • 事前に書いておけるようにしておく
  3. 10分後、 1人3分 で口頭補足の時間を設ける(書ききれない情報を補うため)(〜20分)
    • 「我々は、書いたこと以上のことを知っている!」
  4. 発表の順番はルーレットで決める(特定の人だけが話し続けない)
  5. 口頭共有後、付箋を見ながら課題を検討する(5〜7分)
    • 「なぜ?」「どうして?」を繰り返し、目標と実績のギャップを埋めるために何に取り組むべきかを書き込む
  6. 必要に応じて生成AIにも課題案を出してもらう
    • 一般論になりやすいので、観点の補助として使う
  7. その後、他の人の付箋も見ながら 「課題」にドット投票 を行い、優先順位の合意形成をする(〜3分)
  8. 優先課題について、具体的な解決策を出す(5分〜7分)
    • 「どうやればできそうか?」の観点で、できるだけ具体的に書く(最初から「できない」「難しい」で止めない)
  9. ここでもAIの提案を参考として使う
  10. 次に、他の人の付箋も見ながら 「解決策」にドット投票 を行い、着手すべき打ち手を絞る(〜3分)
  11. ドットの多い解決策からタスクを検討する(5分)
    • 筆者のチームでは「2週間以内に試せるか」「影響が大きいか」を軸に ImpactEffortスケール で整理
    • スケールの中の左上(DO NOW)を優先し、担当者を決めてカンバンに入れる
  12. カンバンのタスクは、ステータス確認とアップデートを継続する(5分)

タスクの検討は、ファシリテーターの力量が問われます。筆者のチームの場合、メンバーのスキルや負荷状況を筆者が考えながら、筆者の経験と勘と「希望」を入れて決めています。メンバーの前で思考の状況を口頭で話しながらスケールの中にタスクをプロットしています。

うまくいく条件

このやり方だと、「ドットが付かなかった付箋はどうするのか?」という疑問が出ます。筆者のチームでは次のようにしています。

  1. 付箋はAIでレポート化し、社内の別の定例会で活用することがある
  2. ドットが付かなかった付箋は、基本は「いったん手放す」
    • ただし、筆者は全てに目を通し、必要に応じてコメントを入れたり、1on1で確認する

この会議のやり方は Lightning Decision Jam を参考にしています。筆者が使っているデジタル・ワークプレイスにはテンプレートがあり、元の8ステップを運用に合わせて改良しました。
また「なぜを5回繰り返す」や「言い換える」なども取り入れ、1時間で完了できるように調整しています。タイムマネジメントが要です。
人数が多い場合(10人以上)は、60分枠なら 5〜6名 のチームに分けて実施することをおすすめします。口頭共有の時間を確保しやすくなります。

よくあるつまづきと対策

導入直後は、付箋を1〜2枚しか書かないメンバーもいます。理由は「書かない/書けない」などさまざまです。回を重ねることで徐々に増えることが多いですが、次の考え方をチームで共有しておくのが効果的です。

  • 率直に書ける
  • まだ整理できていないことも書ける
  • 失敗も書ける
  • リスクを書いても非難されない

そして何より、書かれた内容のうち 1つでも2つでも実際に検討され、改善される ことが重要です。良いことだけ取り上げて、他は何もしない状態が続くと、メンバーは書かなくなります。

まとめ

本稿では、筆者が工夫している定例会議の改革例を紹介しました。定例会議に限らず、報告会議やテーマ検討の会議でも「付箋に書く」手法は有効です。オンライン/オフラインを問わず、参加メンバー全員の考えを可視化でき、合意形成をスピーディーに進めやすくなります。

もし「このやり方を自社の定例会議に当てはめると、どこから変えるのが効果的か」を整理したい場合は、お気軽にご相談ください。現状の会議体(参加者・頻度・目的)を伺ったうえで、 進め方の叩き台 (60分の流れ/付箋の問い/AIの使いどころ)を提示できます。まずは短い壁打ちからでも大丈夫です。

たとえば、次のような状態の方に向きます。

  • 定例会議が共有・報告で終わり、意思決定や改善が進みにくい
  • 発言が一部に偏り、現場の気づきが拾いきれない
  • ナレッジ共有が属人化し、チーム学習が回らない

会議改革の目的は、イノベーションが起きる組織に進化し続けることにあります。2025年のノーベル経済学賞(経済学賞)は、「イノベーションが持続的な経済成長を生み出す仕組み」を説明した研究に贈られました[2]。

社員が知識を共有したいと思える職場、誰もが自分らしいリーダーシップを発揮できるチームづくりについて、一緒に議論してみませんか。

「定例会議の改善について相談する」「会議の進め方を一緒に整理する」「現状の会議体を伺い、合う進め方の叩き台をご提案します」「まずは壁打ちからでもOKです」お問い合わせページへ導線

参考文献/関連記事

[1] ナレッジマネジメントに学ぶ組織風土改革:DXが進まない“本当の理由”と管理職の打ち手
[2] NobelPrize.org「Prize in Economic Sciences 2025 – Press release」(2025年10月13日)

著者

柳澤政夫
NeuronES事業開発室 室長
Neuronのマーケティング、インサイドセールス、パートナーデベロップメント、新規事業を担当し、伴走支援者としてお客様対応も行う。化学企業、日本マイクロソフト、アマゾンウェブサービスジャパンなどに勤務。オンラインセミナー「はじめての生成AI」「生成AIで革新するナレッジマネジメント」を主宰。MBA(Finance)、中小企業診断士、日本ナレッジ・マネジメント学会会員

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