法律事務所のDXとは?やり方や注意点、おすすめのツールを解説
カテゴリ:技術課題・解決法
法曹界では、オンラインでの裁判やクラウド上での訴訟記録の管理などをはじめとした「2025年度中の民事裁判IT化」が推進されています。そのため法律事務所においてもDXを推進することが急務となりました。
DXを推進することで、弁護士や事務所内のスタッフの業務効率化や生産性向上に期待が持てます。また顧客の利便性も向上するため、新規の顧客獲得にも有効です。
そこで、この記事では法律事務所におけるDXの必要性や取り組み内容、注意点、おすすめのツール・システムについて解説します。
目次
法律事務所におけるDXの必要性
ここでは、法律事務所におけるDXの必要性を「適切な法的サービス提供の維持」と「2025年度中の民事裁判IT化」という2つの観点から解説します。
適切な法的サービス提供を維持するため
災害や感染症の流行などの事態が発生した際、アナログ文化では法的サービスを提供することが難しくなります。
例えば、顧客との打ち合わせは対面での対応が一般的であったため、2020年4月に新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発表された際には、打ち合わせを中止もしくは延期せざるを得なかった法律事務所もあるでしょう。
このように緊急事態においても適切な法的サービス提供を維持するために、システムの導入及びにビジネスモデルの変革としてDX化が求められているのです。
「2025年度中の民事裁判IT化」が推進されているため
裁判所では「2025年度中(2026年3月まで)の民事裁判のIT化」を掲げて、訴状などのオンライン提出や口頭弁論などのWeb参加、訴訟記録の原則電子化などの施策を推進しています。
そのうちの一つである民事訴訟法第132条の11関係では、弁護士に裁判書類のオンライン提出・受取りを義務化することを定めた条項があります。IT化に向けて民事訴訟法が見直されており、弁護士もIT化に対応することが求められています。
業務効率化・生産性向上のため
従来の紙媒体による記録や書類は、作成・管理に膨大な時間や手間がかかっていました。また、契約書類や案件の資料の確認も目視で行うことが必要でした。
当然紙媒体の場合、分厚いファイルで保存するために物理的なスペースが必要なため事務所スペースの確保やキャビネット等への導線を整理する必要がありました。
こうした状況においてはすべての業務を「人」が行う必要があり、DX化を実施している企業の業務プロセスと比較すると非効率かつ非合理的です。他業種のサービスでは一般的に提供されていることを、法律事務所では提供できないとなれば、顧客満足度は低下してしまうでしょう。
そこで、これまでの業務プロセスや顧客管理、案件管理などを見直したうえで、適したITツールを導入するDX化により、業務効率化・生産性向上を実現することが求められています。
法律事務所のDX化で何が変わる?
ここでは法律事務所におけるDX化により、大きく変わる主な業務プロセスについて解説します。
顧客との打ち合わせ
従来 | 守秘義務のため、顧客に法律事務所に訪問してもらい、実施することが一般的 |
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DX化後 |
・チャットツールを利用することで、オンラインミーティングによる打ち合わせが実現可能 ・顧客の利便性が向上し、遠方の顧客開拓も可能 |
資料の作成・管理
従来 | 裁判所への裁判資料の提出手段がFAXもしくは郵送しか認められていなかったため、大量の紙資料をいずれかの方法で提出。裁判期日になると、保管していたファイルを持参する必要があった |
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DX化後 |
・案件ごとの大量の資料や記録をクラウド上で保管でき、場所や時間を問わずに書類の作成や管理が可能 ・エンタープライズサーチを利用する場合は、クラウド上や社内サーバなどの保管場所関わらず一括で横断的な全文検索(ファイル名だけなくファイルの中身も対象にした検索)が実現する |
契約書資料のチェック体制
従来 | 契約書や資料は、担当の弁護士がすべて目視で確認 |
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DX化後 | 法律文書作成支援サービスやリーガルチェックサービスなどを導入することで、スピーディーな確認や負担軽減につながる |
論文・文献の検索
従来 | 事務所内の書庫や国会図書館、弁護士会の図書館に所蔵されている論文や文献をプリントアウトして検索 |
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DX化後 | 判例検索サービスや法律文書閲覧サービスを利用することで、場所や時間を問わずに論文・文献の検索が可能 |
契約の締結方法
従来 | 契約書の原本を顧客と相手方に送付し、記名・押印ののち返送してもらう必要があったため、契約締結だけで数日以上かかることが一般的 |
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DX化後 | 電子契約サービスを利用することで、すぐに契約締結手続きを完了させることが可能 |
法律事務省のDX化における注意点
法律事務省のDX化における注意点について解説します。
「非弁提携」への抵触の有無
「非弁提携」とは、弁護士法第72条に定められた「弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で一般の法律事件に関して法律事務を取り扱い、またはその周旋をすることをビジネスとしてはいけない」という決まりのことです。
DX化において「非弁提携」に該当しないかどうかを確認することが必要です。例えば、弁護士法人以外のAIによる契約書チェックサービスの提供が「非弁提携」に該当するかどうかについて問題提起されています。
こうした事態に、法務省は令和5年8月に、AIによる契約書チェックが違法にならない使い方としてガイドラインを公開しています。
参考:AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について
このようにAI技術の利用については、今後法整備されていくものと考えられるため、最新情報を確認することが重要です。
情報セキュリティの確保
DX化によるITツール導入により、利便性は大幅に向上する一方で、システム上にデータを預けることで情報セキュリティリスクに晒される可能性が高まります。
弁護士は多くの機密情報を抱えているため、守秘義務を遵守することが欠かせません。DX推進において高い情報セキュリティを確保することが求められます。
法律事務所のDX化におすすめのツール・システム
DX化に欠かせないITツール・システムにはどのようなサービスがあるのでしょうか。最後に法律事務所のDX化におすすめのツール・システムを解説します。
エンタープライズサーチ
エンタープライズサーチとは、法律事務所内検索システムのことです。社内で保有しているデジタル資料を一括で検索できます。
法律事務所では膨大な数の案件や顧客、法律資料などを管理する必要があることから「ほしい情報を見つけるのに時間や手間がかかる」という経験がある方も多いでしょう。さらには、探す資料の大半は大量の文字情報であるため、ファイル名だけでなくファイルの内容をも対象に検索する必要があります。
エンタープライズサーチを利用すると、オンプレのファイルサーバ、ポータルサイト、DBに加えて、クラウドストレージのBoxやSharePoint Online、Dropbox、Google Driveなどに点在した資料を一括で横断検索が可能です。(つまり、保存場所を意識することなく一括検索できる)
「Neuron ES」は法律資料の検索にも適しており、画像検索やファイル名検索、高度な検索、関連文書検索などの機能により、多角的に資料を検索できます。
顧客管理ツール
顧客管理ツールとは、顧客情報を一元管理できるツールのことです。顧客情報をデータ化することで、システム上でそれぞれの顧客や案件の状態を可視化できます。
こうしたデータをマーケティングにも活用することが可能であるため、問い合わせ数や面談化率などを分析する際にも有効です。
デジタル案件管理システム
デジタル案件管理システムとは、案件の状態や資料共有、打ち合わせ時のメモなどの必要な情報を一元管理できるシステムです。案件管理システムを導入することで業務プロセスを可視化できるため、業務の見直しや業務効率化を期待できます。
また、案件の情報をシステム上で共有できるため、標準化や担当弁護士の変更時の引継ぎにも有効です。
法律事務所のDX成功可否はツール選定が握っている
この記事では、法律事務所におけるDXの必要性や取り組み内容、注意点、おすすめのツール・システムについて解説しました。
民事裁判のIT化が推進されており、裁判所とのやり取りがオンライン化されつつあります。法律事務所においても、IT化とともに業務を変革することで、業務効率化・生産性向上を実現することが求められています。そのためには、事務所の課題解決にあったツール・システムを導入することが必要です。
「Neuron ES」は、多くの法律事務所に導入されているDX推進におすすめのシステムです。「断片的な記憶として残っているフレーズから事務所内の資料を網羅的に検索したい」「あの資料はどこに保管されているかわからない」といった法律事務所によくあるお悩みを、スムーズに解決できる検索システムです。
既存のデータストレージを変更することなく、ファイルのアクセス権もそのまま引き継ぐため、高いセキュリティ性も担保しています。
「Neuron ES」について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
https://www.brains-tech.co.jp/neuron/
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