ネットワーク障害の現状とは?2つの課題やAIを活用した早期発見の事例を紹介

カテゴリ:基礎知識

近年、企業のDX推進やクラウドサービスの普及により、ネットワークインフラの重要性は増す一方です。従来の監視システムや人的モニタリングでは、複雑化するネットワーク環境での予兆検知や24時間体制の維持が困難になってきています。

さらに総務省では、障害発生から初報まで「30分以内」というガイドラインも設定されたため、ネットワーク障害の復旧・周知にかかる時間の短縮が期待されています(※1)。

そこで本記事では、このような課題に対するソリューションとして注目されているAIによる障害検知について、最新の動向と具体的な活用方法をご紹介します。

(※1)出典:総務省「電気通信サービスにおける障害発生時の周知・広報に関するガイドライン 」

ネットワーク障害の現状と課題

ネットワーク障害が企業活動に大きな影響を与える課題として、以下の2点が挙げられます。順番に見ていきましょう。

課題1:ネットワークへの依存

現代社会では、ビジネスや日常生活のあらゆる場面でネットワークが欠かせません。クラウドサービスの普及やIoTデバイスの増加により、ネットワークへの依存度は年々高まっています。

一方でネットワーク障害が発生したときの影響も大きくなっています。たとえば、以下などの可能性が挙げられるでしょう。

  • eコマースサイトがダウンすれば売上機会を逃す
  • 工場の生産管理システムに障害が起これば、製造ラインが止まる

このようにネットワーク障害は、企業の収益や信頼性に直結する重大な問題となっているのです。

課題2:従来の障害検知手法の限界

これまでのネットワーク監視では、あらかじめ設定した基準値を超えた場合に警告を出す仕組み「閾値監視」という方法がおもに使われてきました。

しかし、閾値監視では検知できない「サイレント障害」と呼ばれる問題が増えています。サイレント障害とは、急激な変化ではなく、徐々に性能が低下していくような障害のことで、このような障害を早期に発見するには、より高度な監視技術が必要なのです。

AIを活用したネットワーク障害検知の仕組み

AIを用いたネットワーク障害検知は、膨大なデータから異常を見つけ出す能力に優れており、主に以下2つのような仕組みがあります。それぞれの内容を解説します。

仕組み1:機械学習

AIを活用したネットワーク障害の検知では、機械学習という技術が使われます。機械学習は、大量のデータから規則性やパターンを学習して、異常を検出する能力をもっています。

たとえば、過去のネットワークの正常な状態データを学習させて、通常とは異なる動きを素早く見つけ出すことが可能です。人間の五感では気づきにくい、微妙な変化や異常にも気づけます。

仕組み2:リアルタイムのデータ分析

AIを用いた障害検知システムでは、ネットワークから送られてくるデータをリアルタイムで分析します。

  • トラフィック量
  • 応答時間
  • エラー率

などのさまざまな指標を常に監視し、通常とは異なる挙動を即座に検出します。

さらに過去のデータから学習した予測モデルを使って、将来起こりうる障害を予測することも可能です。そのため問題が大きくなる前に対処ができ、ネットワークの安定性を高められます。

ネットワーク障害の早期検知がもたらす3つのメリット

AIを活用したネットワーク障害の早期検知には、大きく分けて以下3つのメリットがあります。順番に解説していきます。

メリット1:ダウンタイムの削減

従来の監視方法では見逃しがちだった小さな異常も、AIを活用したネットワーク監視システムを活用すれば素早く発見できるため、設備の停止時間(ダウンタイム)を大きく減らせます。

たとえばネットワークの通信速度が少しずつ遅くなっていく場合、人間の目では気づきにくいですが、AIなら早い段階で検知可能です。

問題が大きくなる前に対処できるため、長時間のシステム停止を防げるのです。結果としてサービスの継続性が向上し、顧客の信頼を維持することにつながります。

メリット2:コストの最適化

AIによる自動監視システムの導入を行うと、業務の全体的なコスト削減も可能です。

従来の方法では、設備に対して多くの人員を24時間体制で配置する必要がありましたが、AIを使えば人的リソースを効率的に配分できるようになります。

また誤って問題を報告してしまう「誤検知」も減少するため、不要な調査作業を減らせるでしょう。さらにAIが収集したデータを分析すれば、ネットワーク機器の寿命予測や適切な交換時期の判断が可能になり、計画的な設備投資をできるようになります。

メリット3:顧客満足度の向上

ネットワーク障害の早期検知は、サービスを利用する顧客満足度の向上にもつながります。

オンラインショッピングサイトでは、ページの読み込みが遅くなる前に問題を解決できれば、買い物客は快適に商品を探し続けられるでしょう。

動画配信サービスでも、映像の品質低下や途切れを未然に防ぐことで、視聴者の満足度を高められます。

AIを使った監視システムにより、ユーザーが不便を感じる前に問題を解決できるため、サービスの質が向上し、顧客の信頼度も高まります。

Impulseによるネットワーク障害の早期検知

弊社「ブレインズテクノロジー株式会社」が提供する、AI異常検知ソリューション「Impulse」は、多くの企業でネットワーク障害の早期検知に活用されています。

その特徴と具体的な導入効果を見ていきましょう。

AI異常検知ソリューション「Impulse」の概要

Impulseは、機械学習技術を活用してネットワークの異常を検知するAIソリューションで、従来の閾値ベースの監視では発見がむずかしかった「サイレント障害」の検知に優れています。

Impulseの特徴は、

  • 複雑で膨大なセンサーデータを収集・可視化
  • 障害や故障予兆の検知要因を追究

できる点です。

上記の特徴によって問題の根本原因を素早く特定し、適切な対策を行えます。

Impulseは「24時間365日」のリアルタイム監視を実現し、ネットワークの安定性向上に貢献するお客様の現場で鍛えられたソリューションです。

株式会社オプテージにおける導入効果

株式会社オプテージ(旧:株式会社ケイ・オプティコム)は、関西一円で150万を超える加入者をもつ大手通信事業者です。

同社はImpulseを導入し、ネットワーク監視の改善を実現しています。

導入前は、

  • 従来の閾値監視では検知できない「サイレント障害」が課題
  • 約200件/日の誤検知が発生

しており、障害の原因特定や復旧までに多くの時間を要してしまいました。

しかしImpulse導入後、

  • サイレント障害の検知が可能になった
  • 障害箇所の特定が容易になった

などの成果を得られ、日々発生するトラフィックの急減も迅速に検知できるようになり、誤検知も大幅に抑制されました。

出典:ブレインズテクノロジー株式会社「株式会社オプテージ様 | 事例紹介」

Hinemos連携による統合監視の実現

Impulseはネットワーク障害の検知だけでなく、幅広いIT機器の監視にも活用可能です。

たとえば、統合運用管理ソフトウェアである「Hinemos」とImpulseを連携させることで、より幅広い監視を行えるようになります。

仕組みとしては、Hinemosが収集・蓄積したITシステムのリソースデータを、Impulseが分析して、高度な予兆検知や要因分析を行います。Webサーバーのスローダウンといった、通常の閾値ベースの監視では検知がむずかしいサイレント障害も、Impulseにより予兆として検出できます。

上記の連携により、障害の早期発見と素早い対応が可能になり、システム全体の安定性の向上が可能です。

まとめ

AIがネットワーク障害を早期に検知する技術により、ネットワーク運用は大きく進歩しています。

人の目では見逃しやすい「サイレント障害」も発見でき、システムの異常も事前に察知できるようになりました。

弊社が提供中のImpulseをはじめとする先進的なツールを導入すれば、システム停止時間が減り、運用コストも抑えられ、利用者の満足度も高められるでしょう。

Impulse
AIを活用した予知保全に最適なソリューション「Impulse」
2014年市場に先駆けてリリースされ、数多くのお客様の現場で鍛え上げられた異常検知ソリューション「Impulse」。

複雑で膨大なセンサーからの時系列データや音声・画像・映像等からデータを収集/分析し、従来の管理では発見できなかった障害や故障予兆の検知、不良品の検出、要因分析などを行います。

Impulse 公式サイトはこちら

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