自動化できる検査と自動化できない検査

カテゴリ:基礎知識

製造業において、製品の品質を保証するためには検査の工程が欠かせません。従来、多くの検査は人間の目や手作業に依存していましたが、近年、技術の進歩に伴い、自動化が進んでいます。
検査工程の自動化は、品質の安定化、生産性の向上、人件費の削減といった効果をもたらすだけでなく、検査データの蓄積と分析を通じて製造プロセスの改善にも貢献します。
本記事では、自動化が可能な検査と、現時点では自動化が難しい検査について解説します。

自動化できる検査

製造業における品質管理において、検査工程は製品の品質を保証し、不良品の流出を防ぐための重要な役割を担っています。冒頭で述べたように、これまでは多くの検査が作業員の目視や手作業によって行われていました。
しかし、近年では技術革新により、様々な検査が自動化されつつあります。
ここでは、自動化が可能な検査の種類と、その具体的な方法について詳しく解説します。

目視検査

製造工程における目視検査は、製品の外観や表面状態を人間の目で確認し、傷や変形、異物付着などの不良を発見する方法です。従来は作業者の経験や技能に依存していましたが、近年は自動化技術の進歩により、より効率的で正確な検査が可能になりました。

自動化の方法

ここでは、目視検査を自動化するための具体的な方法について解説します。
・カメラシステムの導入
高解像度カメラと適切な照明システムを組み合わせて設置し、製品の画像をリアルタイムで取得します。複数のカメラを使用することで、様々な角度からの撮影が可能となり、死角のない検査を実施できます。
・画像処理ソフトウェアの活用
取得した画像データに対して、AIや機械学習アルゴリズムを用いた高度な画像解析を行います。微細な傷や変形、色むら、異物付着などの不良を自動的に検出することができます。また、教師なし学習を活用することで、不良品データを大量に収集せずとも検査システムを構築することが可能です。
・ロボットアームの導入
製品を正確に位置決めし、ロボットアームを使用して必要に応じて様々な角度から撮影を行います。複雑な形状の製品でも、安定した品質で検査を実施することが可能です。検査速度の向上や作業者の負担軽減も期待できます。

寸法検査

寸法検査は、製品の寸法精度を確認する重要な品質管理工程です。従来は、ノギスやマイクロメーターなどの手動測定器具を使用して行われてきましたが、近年は、高精度な自動測定システムの導入が進んでいます。

自動化の方法

ここでは、寸法検査を自動化するための具体的な方法について解説します。
・カメラシステムとAIによる画像検査
高解像度カメラで撮影した製品画像に対して、AIや機械学習アルゴリズムを用いた画像解析を行います。画像から製品の輪郭や特徴点を抽出し、あらかじめ設定された基準値と比較することで、寸法の合否判定を自動的に実施。複数のカメラを使用することで、様々な角度からの測定が可能となり、より正確な寸法検査を実現できます。
・三次元測定機(CMM: Coordinate Measuring Machine)による自動測定
三次元測定機は、対象物の縦・横・高さの三次元座標(X, Y, Z)を測定することで、寸法、形状、部品同士の位置関係などを高精度に測定する装置です。測定プローブが製品の表面に触れることで座標データを取得し、プログラムに従って複数の測定ポイントを自動的に検査します。測定データは自動的に記録・分析され、寸法公差との比較や統計的な品質管理に活用できます。

非破壊検査(NDT)

非破壊検査は、製品や構造物を破壊することなく、内部の欠陥や異常を検出する重要な検査手法です。主に溶接部や金属材料の品質確認に用いられ、製品の信頼性と安全性を確保する上で欠かせない工程となっています。近年は、検査の自動化が進み、より効率的で精度の高い検査が可能になりました。

自動化の方法

ここでは、非破壊検査を自動化するための具体的な方法について解説します。
・自動超音波検査システム
ロボットアームに取り付けられた超音波プローブが、対象物の表面を自動的にスキャンします。得られた超音波データはリアルタイムで解析され、内部の空洞、亀裂、異物などの欠陥を検出します。複雑な形状の製品でも、ロボットアームの動きをプログラミングすることで、正確な検査が可能です。
・自動X線検査装置
コンベアベルト上を流れる製品に対して、自動的にX線撮影を行い、内部構造の画像を取得します。AIや画像処理技術を活用して画像を解析することで、内部の欠陥や異常を自動的に検出します。製品の位置決めや撮影角度の調整も自動化され、連続的な検査が可能です。

現在自動化が難しい検査

製造工程における検査の自動化は着実に進展していますが、現時点では、人間の高度な判断力や熟練した技術が不可欠な検査領域も存在します。これらの検査は、試験片の準備や試験条件の設定、結果の解釈などに専門的な知識と経験が求められるため、完全な自動化は困難です。
ここでは、現在自動化が難しいとされる検査の種類と、その理由について詳しく解説します。

複雑な機械的試験(引張試験など)

引張試験や疲労試験などの機械的試験は、試験片の準備から実施まで複数の工程で人間の判断や作業が必要です。試験片の形状や寸法の確認、試験機への正確な取り付け、試験中の状態監視など、熟練した技術者の経験と知識に依存する部分が多く存在します。

化学成分分析

化学分析では、サンプルの前処理工程が結果の精度に大きく影響します。試料の採取方法、粉砕・溶解などの前処理、分析装置へのセッティングなど、各工程で熟練した技術者の判断が必要です。特に、不純物分析や微量成分分析では、コンタミネーション防止や適切な分析条件の設定など、高度な専門知識と経験が求められます。また、得られたデータの信頼性評価や異常値の判定にも、専門的な知識が必要となります。

電気的試験

電気製品や電子機器の性能試験では、複雑な配線接続や測定器の設定が必要です。測定点の選定、配線の接続・切り離し、測定条件の設定など、人の手による作業が不可欠な工程が多く存在します。特に、高電圧試験や絶縁試験では、安全性の確保や測定精度の維持のため、専門技術者による監視と判断が必要です。また、異常が発生した際の原因究明や対策立案にも、専門的な知識と経験が求められます。

まとめ

製造工程における検査の自動化は、技術の進歩により大きく発展しています。目視検査、寸法検査、非破壊検査などの多くの検査工程で、カメラシステム、AIによる画像処理、ロボットアームなどの技術を組み合わせることで、効率的で正確な自動検査が実現可能となっています。
一方で、複雑な機械的試験、化学成分分析、電気的試験などは自動化が進んでいません。試験片の準備や結果の解釈に専門的な知識と経験が必要な検査は、現時点では完全な自動化が困難な領域として残されています。
検査工程の自動化は、品質の安定化、生産性の向上、人件費の削減などの効果をもたらすだけでなく、検査データの蓄積と分析により製造プロセスの改善にも役立ちます。現在は自動化が難しい試験や分析であっても、今後の技術革新により、自動化が可能になっていくでしょう。

Impulse
Impulseによる検査の自動化
Impulseは、外観検査の自動化を革新的に実現する機械学習ソリューションとして、2014年に市場に先駆けてリリースされました。画像、動画を中心とした複雑なデータを高度に分析し、従来の目視検査では見逃されがちな微細な欠陥や異常を機械学習技術により自動的に検出します。製造ラインにおける不良品検出の精度を大幅に向上させ、人手に頼っていた外観検査を自動化することで、品質管理の効率化と安定化に貢献するシステムです。

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