生成AIは現場でも大活躍。製造業における活用事例をご紹介

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ChatGPTが公開された2022年11月以降、急速に生成AIの活用場面が増えました。日進月歩でアップデートされる生成AIは製造業でも数多く利用されています。

この記事では製造業における生成AIの概要と活用事例をご紹介いたします。

製造業における生成AI方法とは

一般的に生成AIと聞くとチャットベースで情報を取得できるLLM(大規模言語モデル)を想像するかもしれません。しかし、製造業ではLLMの使い方一つ取っても多岐に渡り、稼働データの取得や分析、社内ナレッジからの情報の取得、ゼロベースの設計、協働ロボットの軌道生成、過去データを元にした設計などさまざまです。

また、検査工程における画像ベースの良品/NG品の検出や、データ(波形)の時系列モニタリングによる予知保全、それにネットワーク障害の早期検知にも使用されます。

活用事例

実際に製造業ではどのように生成AIが活用されているのでしょうか?事例を5つ紹介します。

自動車部品メーカーにおける稼働状況の分析と社内事例の検索

ある自動車部品メーカーでは、工場の稼働状況の分析や社内事例(ナレッジ)の検索・呼び出しに生成AIを用いています。

稼働状況の分析においてまず必要なのは、生産ラインのデータの取得です。生産個数や稼働時間などノルマに対する達成率、ラインの停止時間やチョコ停(比較的短い停止)時間などを取得して蓄積しておきます。すると、生成AIがデータを参照して稼働状況の把握や、ノルマ未達時の状況分析をしてくれます。チャットベースの自然言語(人間が使用する言葉)で教えてくれるため分かりやすく、自動で情報の把握や分析をしてくれるため手間もかかりません。改善の方向性も示してくれるため、それをもとに具体的な解決策を検討できます。

改善の方向性から具体策を考えるためには、過去の改善事例を知る必要があります。しかし、そういった資料は紙のまま保管されていたり、データベース化されていても必要なデータへのアクセスに時間がかかったりと誰でも簡単に利用できるものではありません。そこで、過去の社内データを学習して、ユーザーの問いかけに応じて必要な情報を提示してくれる生成AIがあります。これも自然言語ベースのチャットであるため、質問に対して適切な回答を示してくれます。ただし、データの中には企業秘密に相当する情報も含まれるため、生成AIの学習や運用においてセキュリティ面の対策が必要です。

電動シェーバー用リニアモーターの設計

ある家電メーカーでは、電動シェーバーの設計に生成AIを用いました。これまでは、人(設計者)が設計して製品を作り、改善を重ねてブラッシュアップしてきました。しかし、設計者の勘と経験に頼る方法で改善し尽くしたような状況であり、さらなる改善はなかなか望めなかったのです。

そこで、生成AIを使ってゼロベースで設計をしました。生成AIのモデル構築においては、過去の設計データを学習させるというよりは、人間が進化する過程を模した進化型のモデルを構築したのです。とはいえ、何も制約条件がないと生成AIも設計の取りかかりが掴めないため、ムーバー(可動部)周辺にあるステーター(非可動部)の形状や、コイルを巻くための凸部の数などは設計者が決めました。

はじめは効率(入力と出力の比)のよい電動シェーバーを設計できませんでしたが、計算を重ねるごとに効率を向上させ、ついに過去に設計者が設計した効率を上回りました。それにより、過去の延長線上ではない革新的な設計ができたのです。ちなみに設計者が設計すると数か月かけてようやく数%改善できるところを、生成AIなら数日で10%以上の改善をしたとのことです。

センサーメーカー系の研究所が取り組む自然言語指示による軌道生成

あるセンサーメーカー系の研究所は、人が言葉で指示するとその意味を理解して実際の動作まで完了する協働ロボットのプロジェクトに取り組んでいます。協働ロボットといえば、一定条件における一定程度簡単な繰り返し作業など限定的な作業を行うイメージがあります。しかも、そのためにティーチングを行い、事前にアームの軌道を生成する必要があるのです。しかし、同社のプロジェクトでは協働ロボットに口頭で作業を指示すると、その通りの作業をしてくれます。

作業を行うためには、その作業がどのようなものなのか、作業の意図は何か、初期状態と完了状態にはどのような差があるのか、どのような軌道を生成する必要があるのかなど検討することが多々あります。また、作業が完了したときには、当初の目標の状態になっているかの評価も必要です。プロジェクトでは、このような一連の動きを自律的に検討・実行できることを目標に開発を進めています。

IT関連企業によるLLMを活用した協働ロボット

協働ロボットに限らず生産設備は、装置の起動方法や停止方法、初期設定などユーザー(人)が内容を理解して操作しなればならない部分があります。また、実際の作業においても事前にティーチングを行い軌道を生成しなければなりません。しかし、これらをLLMを利用することによりチャットベースでの操作が可能になります。

例えばあるIT関連企業では装置を起動するボタンの位置をLLMに質問して確認し、起動ボタンの写真を撮影してLLMにアップロードすると、「今から押そうとしているボタンが起動スイッチかどうか確認する」ということができます。また、緊急事態発生時にも緊急停止の方法やエラーからの復旧方法をチャットベースで質問できます。

また、ほかのIT関連企業ではLLMで指示された動作を理解し、プログラムを書いて協働ロボットの軌道生成を行っています。ロボットの基本動作をあらかじめライブラリとしてもっておき、指示の内容に応じてこれらを組み合わせたり、座標を調整したりするというものです。

包装資材メーカーにおける製品設計最適化のための機械学習ツール

ある包装資材メーカーは長年、ポリ袋やレジ袋、荷札や紙テープなどを開発してきました。これまでは設計者が包装資材の設計を行っていましたが、強い靭性や環境負荷低減を意図したものなど多様な包装資材に対応するための長い開発時間が問題となっていました。

そこで導入したのが、設計を最適化するための機械学習ツールです。このツールに過去の設計図面や情報を学習させることにより、包装材の仕様に合わせた素材の混合など最適な設計が可能になりました。ツールに過去の情報を学習させると少ないデータでも因果関係を把握でき、それによって設計者の負担が大幅に軽減されたのです。

属人化していた設計情報がツールの中で共有されることもメリットです。設計者の知識をフル活用できるだけではなく、その設計者が退職した後もきちんとノウハウが会社に残ることになります。

まとめ

製造業では一般とは少し異なる方法や用途で生成AIが利用されます。いずれも膨大なデータの解析や情報の取得、設計の最適化や協働ロボットの軌道生成など、製造業ならではの人の負担を軽減するものです。

これまで生成AIが扱うのはあくまでも文字や音声などのデータでした。しかし、今後は協働ロボットの軌道生成などデータではなく実在するモノを動作させるための活用が広がると予測されます。それに伴い、人の負担はますます軽減され、より人間らしいクリエイティブな仕事だけが残る世界になるかもしれません。

Impulse
Impulseのサービスと生成AI
製造現場では、不具合や作業ミスによる不良品の発生が大きな悩みです。 Brains Technologyが提供する異常検知ソリューション「Impulse」では、センサー・音声・画像・動画といった多彩なデータを収集・可視化するだけでなく、従来の閾値ベースだけでは見つけにくかった障害や故障の予兆、不良品の検出などを機械学習で行ってきました。そこに生成AIの手法を取り入れることで、さらに複雑な工程管理や要因分析を行い、迅速かつ的確に対策を打てるようになります。

具体的な機能の例としては、カメラ映像による目視検査や組立不良検査、装着音の解析による嵌合(かんごう)検査、作業映像のリアルタイム監視によるミスの即時検出などが挙げられます。予知保全や設備監視の領域でも、センサーからの異常値をAIが検知し、早期にメンテナンスを行うことで思わぬ生産停止を防ぐことが可能です。

マルチモーダルの解析技術と製造現場のノウハウを組み合わせて進化してきたImpulseに、生成AIが加わることで、より高度な問題解決や新たな価値創出が期待できます。詳細が気になる方は、以下よりお問い合わせください。

Impulse 公式サイトはこちら

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